今回は、化学メーカーである株式会社クラレについて有価証券報告書をザクっと読み解いていきたいと思います。
売上高は2022年12月期で約7千5百億円、時価総額は、2023年10月現在で約5千億円。
日本を代表する化学メーカーの一つですね。
化学メーカーは、消費者が製品のイメージを持ちにくいからか、会社ブランド自体のCMもよく見かけますね。
確かに化学メーカーってよくわからないです。
何を作ってる会社なんですかね。
ざっくりと言うと、樹脂やフィルムの原料だね。
のちほど詳しく見ていきましょう。
クラレって、どういう意味かと思ってましたが、「倉敷」で「レーヨン」を作っていたから「クラレ」なんですね~。
倉敷はかつて紡績が盛んで、ゆかりのある企業が多くありますね。
いまでも国産デニムの産地として有名です。
今回みていく株式会社クラレの有価証券報告書はこちらから。
事業内容について
有価証券報告書(2022年12月期)から、【事業の内容】をみると『当社及び当社の関係会社においては、「ビニルアセテート」、「イソプレン」、「機能材料」、「繊維」、「トレーディング」、「その他」の6部門に関係する事業を行っており、その製品は多岐にわたっています。』とされています。
化学メーカーの製品は本当に多岐にわたることが多いですね。
ビニルアセテートと、イソプレンがわからないです。。
ビニルアセテートは接着剤や、液晶ディスプレイのフィルムなど、
イソプレンは、ゴムや洗浄剤や、化粧品原料、医療用部材まで、どちらも様々なものに使われる化学品だね。
事業系統図をみてみると、それぞれの子会社群が、それぞれの事業を担当していることがわかりますね。
化学品を正確に理解するのは、理系出身者でも専門分野でないと難しいので、大枠のイメージを持ってもらったらよいと思います。
事業系統図・・・有価証券報告書では企業グループの商流が図として記載されています。ここで大まかな商流とグループ会社の機能を理解することができます。
業績について
規模が大きいので セグメント でそれぞれの規模感をみればいいですね~
売上高7千億円のうち半分がビニルアセテートですね。
さらに利益でみると7割以上がビニルアセテートが稼いでいます。
まさに稼ぎ頭の事業ということですね。
セグメント・・・各社の営む事業領域のようなもの。有価証券報告書ではセグメント別の業績を記載する必要があり、どの事業が成長しているかなどを把握することができます。
併せて、地域ごとの売上高もみてみましょうか。
地域別でみると特に偏りなく全世界で売れているのが分かりますね。
どこかで売れなくなっても、他のエリアでカバーできるという意味ではリスクの低いビジネス展開ができているということですね。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
グループ全体で従業員が1万1千人、うち本社が4千人だから、約半分弱は日本本社所属なんですね。
日本採用の人は、大半は日本勤務になりそうですね。
ただ海外売上も大きいので、管理職やマネジメントになると海外拠点への出向は結構ありそうですね。
気になる給与ですが、7.2百万と高給ですね。平均勤続年数も長いので、離職率は低い職場のようですね。
社歴が長い会社だと定年まで勤めあげるというキャリアプランが実績として存在するから、皆さん安心して働けるというのはあるかもしれませんね。
働きやすさ
最後に、女性の働きやすさの指標についてみてみましょう。
上場会社は有価証券報告書に
・管理職に占める女性労働者の割合
・男性労働者の育児休業取得率
・労働者の男女の賃金の差異 などを記載する義務があります。(2023/3期より義務化)
クラレは12月決算なので、まだ開示義務はないのですが積極的に開示をしていますね。
会社の意識の高さがうかがえます。
女性管理職比率が4.7%は高いんですかね?
賃金差異が75%くらいだけど、これはあまり差がない方ですね。
男性の育児休業取得率は50%だけど、どうなんでしょう?
女性管理職比率は高いとは言えないものの、化学メーカーとしては平均的でしょうか。
化学プラントなどでは危険な仕事も多いので、他業種と一律には比較はできません。
男性の育児休業取得率は、まだまだ改善途上ということでしょう。
終わりに
クラレに限らず、化学メーカーは最終製品が消費者に直接届くわけではないので、イメージが難しいのは普通のことです。ただこういった化学や素材メーカーは、日本のモノづくり・強みを支える重要なポジションを占めています。
興味をもって調べていくと、化学メーカーにもそれぞれ特色があるので、是非比較してみてください。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
クラレは、倉敷でレーヨン事業を行う「倉敷絹織」がその起源になります。
今やレーヨン事業は過去のものになりつつありますが、名にその歴史を感じますね。
会社の沿革はこちらからどうぞ。沿革 | kuraray