今回は、サントリーホールディングス㈱について有価証券報告書から読み取れる情報を書いていきたいと思います。
上場していないためグループ全体の株価はありません。非上場の会社グループで最も大きいものの一つでしょう。
個人的にはレモンサワーがマイブームです。
https://www.suntory.co.jp/wnb/kodawarisakaba/
サントリーの有価証券報告書はこちらから。
非上場会社でも有価証券報告書の提出義務があるのは、社債を発行しているためです。
詳細は「金融商品取引法」の24条1項に定めがあります。
原文はとても読みにくいです。作者は読ませるつもりがないとしか思えないというレベルです・・・
なお、日本の時価総額1位はトヨタ自動車です。
企業分析してみよう! トヨタ自動車㈱【7203】-TOYOTA- (事業内容/業績/給与/リスクなど)
事業内容は?
有価証券報告書(2021年12月期)から、【事業の内容】をみると、「飲料・食品」「酒類」「その他」の区分に分かれていることがわかります。
事業内容はイメージどおりでしょうか。
飲料・食品と酒類の2本柱ですね。
売上の表示に(酒税込み)とあるのが面白いですね。
酒類の売上収益は酒税控除後だと3割ほど目減りしていますね。それでもセグメント利益は飲料・食品事業と大きな差がないことを考えると、高い利益率がうかがえます。
お酒の値段って3割は税金なんですね・・(減税してほしい)
会計基準・・・会社は決算を組むにあたって、採用する基準を選択できます。多くの日本の会社はいわゆる日本基準を採用していますが、サントリーHDはIFRS(国際会計基準)を採用しています。ほとんど違いはありませんが、日本基準では「のれんは償却する(費用化する)」のに対し、IFRSだと「償却しない」といった違いがあります。
大株主は?
サントリーを語るうえで外せないのは、この規模にしてオーナー企業であることでしょう。
89%を寿不動産㈱が保有していますね。5%が持株会で、残りをメガバンクと生保で申し訳程度に分け合ってます。
これだけの巨大企業を一族でつないでいくというのは簡単ではありません。
そこがサントリーのすごいところでしょうか。
のれんと無形資産について
サントリーというとジムビームの買収といった話題もあったけど、どんな影響があるの?
多額ののれんが計上されていて、将来にわたる費用負担が生じています。
企業買収をするとき、買収価額には売り手側の利益も入っているので、その部分はのれんや無形資産として表現されることになります。
例えば、価値100円のものを120円で買収すると、20円は差額として、のれんや無形資産として、バランスシートで計上されます。買い手は20円高くても、将来買収事業から得られるお金で回収できると考えるわけですね。この20円は数年をかけて費用になっていきます。
スピリッツ事業にある6,513億円もののれんがBeam Inc.を買収したことによるものとされていますね。
このほかにも買収によって計上された無形資産(ブランド価値など)が注記されているのでみてみましょう。
Jim Beanの商標権が3,041億円計上されているのがわかります。前述の「のれん」と合わせると1兆円ほどが計上されていますね。為替の影響もありますが、当時の買収価額(1兆6千億円)のうち、1兆円超は無形の価値であったということです。
それだけJim Beanブランドに魅力があったということですね。
モノの価値は人によって違いますが、少なくともサントリーは1兆円を回収できる自信があるということですね。すごい経営判断だと思います。
年収や平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
平均勤続年数は19.4年!平均給与も高いですね。
就活で人気なのも納得です・・・
グループ全体で4万人の社員がいる中で、ホールディングス本体の在籍者はたった482人(たった1%)ですから、執行部や幹部クラスが多くを占めているのかもしれませんね。
なお、年収で有名なのはキーエンスです。
キーエンスってどんな会社?業績は?年収や勤続年数は?将来性やリスクは?
事業のリスクは?
最後に、サントリHDの「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
サントリーHDでは、「特に重要なリスク」として16個、「重要なリスク」として7個、計23個のリスクが記載されています。
多いですね・・、各社とも開示の基準はばらつきがあるんですね~
その中でも目に留まるのは「酒類に対する規制に関するリスク」でしょうか。
“WHO(世界保健機関)において、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が2010年に採択され、また、日本においても「アルコール健康障害対策基本法」が2014年に施行される等、世界的な規模で、責任ある酒類のマーケティング活動、アルコール関連問題への取組み強化が求められています。長期的に見て、当社グループの予測の範囲を超える規制等が実施された場合、酒類の消費が減少する場合が考えられます。
このようなリスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、アルコール関連問題にグローバルに取り組むために、専門部署を設置し、国内外の酒類業界と連携して、①不適切な飲酒の予防や適正飲酒の啓発、②責任ある酒類マーケティング活動の推進、③様々なステークホルダーとの連携・協力等を行っています。酒類を製造・販売する企業グループとしての社会的責任を果たすため、広告宣伝活動にあたっては、厳しい自主基準のもと、自ら規制を行っています。また、WHO等国際機関、各国政府の政策やアルコールに対する社会的動向等、機能横断的に現状把握を進め、当社グループの基本戦略方向性を検討しています。そして、アルコールによる健康リスクに関する世界の最新情報の収集を行っています。”
アルコールが長期的には規制対象となりうると考えてるんですね~。
ずっとあるものだから、なくなることはないと思うけど・・
アルコール文化の健全な発展を同時に謳っていますね。
企業としては健康リスクにも気を使うことは世の流れとして必然でしょう。
終わりに
ウィスキーやビールをはじめ、日本の誇るお酒文化の一端を担っている会社といえるでしょう。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。