今回は、国内の化粧品最大手メーカーである資生堂について、 有価証券報告書 をざっくりと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年11月現在で2兆円、売上も2021年12月期では1兆円に達しており、国内化粧品メーカーとしては突出した規模といってよいでしょう。
では早速みていきましょう。
有価証券報告書はEDINETや、各社のHPから見ることができます。
事業内容は?
有価証券報告書から、【事業の内容】をみると、「日本事業」「中国事業」「アジアパシフィック事業」「米州事業」「欧州事業」「トラベルリテール事業」「プロフェッショナル事業」「その他」の区分に分かれていることがわかります。
「プロフェッショナル事業」は理・美容製品の販売等が事業内容ですが、それ以外は化粧品事業の製造販売をエリア別に管理しているということですね。
HPをみると、レストラン事業や保育事業など、化粧品製造販売以外もやっているんですね。
エグゼクティブオフィサーのページが、皆さんかっこよくて、さすが「美」の会社だなと思いました!
一般的に化粧品自体は消費財の中でも原価率が非常に低く、コストの大半はブランディングとマーケティングに費やされています。イメージが非常に大切ということですね。
なるほど・・。損益計算書をみてみると、確かに原価率は20%台ですね・・
資生堂の製品は高くていいものというイメージがあります。値引きも基本的にないですし・・
値引きをしないことも重要なブランディングの一つですね。
価格競争はせずに、ブランド価値を消費者に感じてもらうためにコストをかける戦略です。
ブランドの維持のために、多額の広告費等をかけるわけですが、ダイレクトに売上となるものではないので、広告の効果測定が課題になりますね。
コロナの影響は?
パンデミックにより外出する機会が減ったことで、化粧をする機会自体も減少し、メーカーも大きな影響を受けました。資生堂も例外ではありません。
資生堂はコロナ禍では、「新型コロナウイルス感染症による損失」を特別損失に計上していますね。
180億円もの損失の影響があったんですね。
当然売上も1千億ほどのマイナス影響があり、2020/12期では、税前利益が赤字でした。
2021/12期は、売上も戻して、利益に戻っていますね。
グローバル展開
資生堂はグローバルで事業展開しており、海外比率がとても高くなっています。
セグメント情報をみてみましょう。
なんと日本での売上は2割くらいしかないんですね。
中国とアジア、米国、欧州と満遍なく売上があります。
トラベルリテール事業が売上全体の10%程度の構成にもかかわらず、利益の半分を叩き出しているのがわかりますね。
やっぱり海外旅行となれば財布のひもが緩くなるということですね。(わかります。)
国際線がまだまだ戻ってきていない中でも、これだけ稼げているという意味では、売上伸長の余地は大きいですね。
売上1兆円に対して、営業利益400億ですから、まだまだコロナの影響が大きいと言えます。
営業利益率4%と低い水準ですが、コロナ前は1千憶円ほどの営業利益でしたので、回復途上ですね。
海外旅行、国際線といえば航空業界ですね。ぜひこちらもご覧ください。
企業分析してみよう! 日本航空㈱【9201】-JAL- (事業内容/業績/給与/リスクなど)
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
日本と中国が特に多いですが、どのエリアも一定の人員がいますね。
親会社については、プロフェッショナル事業を除くと管理部隊・本社機能という感じでしょうか。これだけ海外比率が高いと、本社勤務でも多言語でのコミュニケーション能力が求められそうですね・・。
平均年齢はやや若いかなと思いますね。平均勤続年数も長くはないですが、どこでもやっていける力がつくことで、流動性が高いという見方もできるのではと思います。
事業のリスクについて
最後に、資生堂の事業のリスクについてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
資生堂では、3つの分類で計20個のリスクが記載されています。
かなり細かく書かれていますね。特に対応策については具体的な内容がかなり詰め込まれているようです。
その中でも重要なのはやはり「企業・ブランドレピュテーション」でしょうか。
マーケティングに起用したアンバサダーやインフルエンサーの言動については、事前チェックするシステムを導入したり、SNSのモニタリングなど、相当気を使っている様子がみてとれます。
また「デジタル化の加速」「最先端のイノベーション」についても中期経営計画と絡めて、かなり詳細な対応が記載されています。
ここではリスクというより、むしろ新しいテクノロジーをもって、いかに攻めるかというポジティブな姿勢が表現されているように思います。
終わりに
資生堂では、本社の公用語は英語だそうです。
グローバル企業としての存在価値を高めるための改革を推進するためということですが、これに対応するため、従業員への教育・研修なども充実させているようです。
会社のグローバル化に合わせて、人材もスキルアップすることで、会社も従業員も成長できるとの考えということですね。
海外勤務や、グローバルな環境で働きたい方にはとても良い環境ですね!
「人材」ではなく、「人財」として従業員をとらえ、ヒトに投資することが今の経済環境では求められています。そうでないと優秀な人材が集まらなくなっているということです。
資生堂のようなグローバルな会社が日本人の海外進出を後押ししてくれるのは、日本の社会全体にとってもとてもよいことですよね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。