今回は、日本の老舗飲料メーカーであるサッポロホールディングス株式会社について、有価証券報告書を基に会社の特徴を分析していきます。サッポロの売上高は2023年12月期で約5,000億円、時価総額は2024年7月現在で約4,000億円です。
サッポロと言えば、やはり「サッポロ生ビール黒ラベル」と「ヱビスビール」が代表的ですね。
黒ラベルは、日本国内のみならず、海外でも高い評価を受けていますね。ヱビスビールも、高級感のあるプレミアムビールとして人気です。
サッポロの創業エピソードも興味深いですよ。
明治新政府は1869(明治2)年7月、北海道開拓のため「開拓使」を設置。開拓使が廃止される1882年まで、30工場以上にも及ぶ事業が実を結びます。数多くの事業の中にはビール醸造も含まれていました。
歴史紹介 | 歴史・沿革 | サッポロビール (sapporobeer.jp)
開拓使は日本人として初めて本場ドイツで修業したビール醸造人中川清兵衛を迎え入れ、1876年6月から醸造所の建設に着手し、9月に「開拓使麦酒醸造所」を完成させます。サッポロビールの歴史はここに始まります。
サッポロは日本のビール産業の草分け的存在だったんですね。
今回みていくサッポロHD株式会社の有価証券報告書はこちらから。
事業内容について
サッポロHDの公式サイトおよび有価証券報告書から、【事業の内容】を見てみましょう。主な事業内容は次の通りです。
- 酒類・・国内外でビール事業を中心に酒類事業を展開。ビヤホールも運営。
- 食品飲料・・レモンやスープ、飲料、豆乳ヨーグルトなどの製造販売を展開。海外ではシンガポールを中心に飲料事業を展開。
- 不動産・・ゆかりの深い恵比寿・札幌・銀座を中心に不動産の管理・運営、開発事業を展開。
- その他・・保険代理店など。
やはりというか、サッポロの主力事業は酒類の製造販売ですね。
不動産のイメージはなかったです。
恵比寿・札幌と、ビールゆかりの地を中心としているのが面白いですね
歴史のある企業は、古くから土地を保有していることも多く、一等地を保有していればおのずと不動産事業が利益を生むようになるね。
祖業よりも不動産事業が主力となっている会社も結構あると思うよ。
サッポロの場合は祖業のビール製造販売は、いまだに主力事業だね。
業績について
サッポロの業績についても見てみましょう。セグメントごとに規模感を把握しておくと良いですね。
売上は酒類事業が70%ほどを占めてますね。
でも営業利益は不動産事業が、同じくらい稼いでいます!
食品飲料は売上規模の割にはあまり利益がでていないですね~
セグメント・・・各社の営む事業領域のようなもの。有価証券報告書ではセグメント別の業績を記載する必要があり、どの事業が成長しているかなどを把握することができます。
不動産事業では、大型複合施設の「恵比寿ガーデンプレイス」のリニューアルで大きな増収があったみたいだね。
そもそも恵比寿ガーデンプレイスってサッポロの不動産だったんですね・・!
それは儲かるわけだ・・
会社としては酒類事業に経営資源を集中することを謳っているね。
中期経営計画の中で、今後の方向性のイメージが開示されています。
酒類、食品飲料、不動産の三本柱ではなくて、あくまでコアは酒類事業で勝負するってことですかね。
そうだね。特に海外酒類を国内並みに引き上げることを目標としているね。
実際のところは不動産事業がこれだけ稼いでいるので、不動産事業の存在感はまだまだ大きいだろうけど、会社としてはそうは言いたくない(『不動産の会社だよね』と言われたくない)ってことかと思うよ。
実際、不動産事業が儲かっていること自体は悪いことではないからね。
儲かってるだけではダメなんですね・・
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
グループ全体で従業員が6,600名、うち本社(提出会社)は110名と少ないのは、ホールディングス制をとっているからですね。
そうですね。大半は、酒類事業の子会社であるサッポロビール㈱と、飲料事業のポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱に所属しているのだと思うよ。
じゃあこの平均年齢46歳というのも高い気がするけど、偉い人ばっかりがホールディングスにいるからってことですね。勤続年数も長いですもんね~
そうだね。主力子会社も含めると、それぞれもう少し低い数字になるはずだね。
平均給与も高いけど、これも同じですね~
平均でみれば高くは出ているだろうけど、勤続20年ほどでこのくらい(年収900万ほど)の水準になるというのは主力子会社でも同じだと思うよ
働きやすさ
最後に、働きやすさの指標についてみてみましょう。
上場会社は有価証券報告書に
・管理職に占める女性労働者の割合
・男性労働者の育児休業取得率
・労働者の男女の賃金の差異 などを記載する義務があります。(2023/3期より義務化)
グループ全体の管理職における女性比率の実績が14.4%は、高い方ですよね。
でも子会社間でも結構差がありますね。
特に男性一人あたりの育児休業取得率、日数はバラつきが大きいね。
それぞれの母集団の数が違うのだろうけど、配属先で文化が違うのかもしれないね
なるほど、そういう見方もできるんですね。
他の上場会社と同じように、サッポロでも女性活躍推進の目標を掲げています。
2026年には女性管理職は倍増の計画だね。
2026年目標をサッポロホールディングス+4事業会社で、女性取締役比率・管理職比率共に12%とし、ロードマップを作成し、ローリングしながら確実な目標達成に向け取り組みを進めています。2023年度は、女性中堅層の早期育成に向け、経営トップとの対話会やセミナー実施、現場トップ層を育成責任者とし、人財育成計画への積極的関与の仕組みづくりを行いました。結果として2023年12月末現在、サッポロホールディングス+4事業会社で女性取締役比率7.9%、管理職比率6.7%となり、女性管理職比率は1.3%上昇しました。2030年には、サッポロホールディングスの女性取締役比率30%、管理職比率20%の目標を掲げ、ちがいを活かして変化に挑む会社への進化を目指します。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進|人財の活躍|サッポロホールディングス (sapporoholdings.jp)
終わりに
サッポロホールディングスは、伝統と革新を兼ね備えた企業です。特にビール事業においては、日本国内のみならず海外市場でもその存在感を増しています。
統合報告書をみると、サッポロプレミアムビールは北米でも売上を伸ばしているようですね。
今後は海外でも日本のビールが飲めるようになるかもしれません。
当記事が、これから就職・転職を目指す方、投資を考える方の一助になれば幸いです。
日進月歩。