今回は、総合エレクトロニクスメーカーであるパナソニックについて、 有価証券報告書 をざっくりと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年10月現在で2兆4千億円、売上も2022年3月期では7兆円。会社については誰もが知るところでしょう。
では早速みていきましょう。
有価証券報告書はEDINETや、各社のHPから見ることができます。
パナソニックの有価証券報告書はこちらからどうぞ。
創業者と社史
パナソニックといえば、創業者である松下幸之助に触れないわけにはいかないでしょう。旧社名である松下電器産業のほうが馴染みのあるという方も未だに多いでしょうし、実際に、パナソニック製品を「松下」製品と呼ぶ年配の方もいらっしゃるのでないでしょうか。
会社名こそグローバルブランド名である「パナソニック」に変更しましたが、当然社名変更前から「パナソニック」ブランドで製品を売っていたのですから、消費者からすると何も変わっていないということですね。昔は「National」ブランドも含め、電池一本からテレビ、住宅そのものまで作ってしまう、日本の高度成長をそのまま表現したような会社といえます。
松下幸之助の「道をひらく」はいまだにベストセラーで、時代を超えて語り継がれていますね。
私も新人時代に拝読しました。
もう社史というより、歴史上の人物といったイメージですよね!
日本経済界のレジェンドという感じ・・
日本の総理大臣は答えられなくても、トヨタとパナソニックは知っているというくらい、日本を象徴する会社の一つでしょうね。
事業内容は?
有価証券報告書から、【事業の内容】をみると、「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つに分かれていることがわかります。連結子会社531社と「総合」エレクトロニクスメーカーのというとおり、電気の通るものなら何でも作っているといっても過言ではなさそうです。
くらし事業は、私たちも馴染み深い白物家電の事業ですね。
私もドライヤーはナノケアを愛用してます!
「オートモーティブ」は車載システムやデバイスなど車関係、「コネクト」はパソコン・タブレットのほか、産業用システム・ソフトウェア関係、「インダストリー」はスイッチやコンデンサーなど電子部品、「エナジー」はリチウムイオン電池など電池関連、「その他」ではテレビやオーディオのほか、ハウジングまで手掛けています。
・・・いろいろありすぎて、全体像をつかめないですね。
数字をみて、規模感をつかみましょう。セグメント情報を見ていきます。
くらし事業が売上の半分ですね。
全体的に利益率は低いようにみえます。
確かに営業利益率は全体で5%程度にとどまっているので、決して高い水準とはいえないですね。コスト高のなかで、競争優位となる部分がぼやけてしまっているといえるかもしれません。
実際は強い部分がグループの各所にあると想像しますが、総合メーカー故にそれが見えにくくなっているのではと感じますね。
なお、エリア別の売上高も見てみましょう。
日本での売上が半分あるんですね。思ったよりも海外比率は高くないかも・・
といっても半分は海外なんですけど。
特に米国と中国が成長を牽引するマーケットになっていますね。経済成長している2国がそのまま業績に反映されています。
売上の規模を考えると、時価総額が低い気がします。。まあそれでも十分大きいんですけど。
総合メーカーかつ、営業利益率の低さから、 コングロマリットディスカウント の要素が強いのではと思います。
研究開発活動が重要!
電器メーカーで、かつ利益率の低い状況ということですので、研究開発により、いかに将来のビジネスの種を作っていくかが重要な課題の一つといえます。
これは冒頭の抜粋ですが、売上の5%程度を研究開発に回しているんですね。
各事業別にそれぞれ多くの開発テーマがあることがうかがえます。
おそらく将来の強みとなるようなものも含まれていると思いますが、コングロマリットゆえに、「これを成功すれば売れる!」というものが見えてこないのも事実ですね。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
世界中で24万人もの人を雇用しているんですね!!パナソニック本体だけでも5万人とすごい規模感です。勤続年数も22年とかなり長いですね。あいまって平均年齢も高く感じます。
総合メーカー故に裾野が広く、多くの人員を抱えざるを得ないということはあると思います。
一方で雇用を生み出すという意味では、社会への貢献度は高いとも言えます。
ただ、もし年功序列のビジネスモデルが依然として強く、若くて能力のある人材が評価されないということだとこれから先の人材確保に苦労するかもしれませんね。
事業のリスクは?
最後に、パナソニック自身が考える事業のリスクについてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
ここでは6つの分類で計27個のリスクが記載されています。
どこの会社でもありそうな一般的なリスクが並びますが、その中でも重要と考えられるのは「他社との提携・企業買収等の成否」のリスクでしょうか。
2021年9月にAIなどに強みを持つBlue Yonderの株式を追加取得し、完全子会社化していますが、この買収に期待した成果が十分に得られない可能性がリスクとして記載されています。
パナソニックはこの買収に関連して、約1兆円ののれん・無形資産を計上していますので、この買収の成否には社運を賭けているといってもよさそうです。
終わりに
最終製品で世界シェアトップをとれる日本メーカーは、どんどん少なくなってきています。
韓国や中国、台湾をはじめとした海外メーカーとの激しい競争においては、厳しい価格競争の末、事業から撤退した日本メーカーも多くあります。TVや太陽光パネルを売っていたシャープなどは典型例でしょう。
買収後に、いかにうまく統合し、シナジー効果を出していくかは非常に難しい問題です。
特にパナソニックほどの規模の会社であれば、どうしても過去の成功体験や、変化を嫌う雰囲気というのが強くなっていきます。これを何とか突破して、次のステージに進んでもらいたいですね。
やっぱり日本のメーカーには頑張ってほしいし、電気製品を買うときに常に選択肢の一つであってほしいですね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。
日進月歩。