今回は、日本を代表する日用品メーカーである花王株式会社について有価証券報告書をザクっと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2023年6月現在で2兆3千億円。洗剤の「アタック」や「ビオレ」などのメジャーブランドのほか、カネボウ・ソフィーナなどの化粧品を製造販売する総合日用品メーカーです。
実は化学品も手掛けていて、売上の4分の1を占めています。
CMでは日用品ばっかりなので意外でした・・!
化粧品と、化学薬品を同じメーカーが作っているというのがイメージ的によくないため、という戦略かもしれませんね。
今回みていく花王株式会社の有価証券報告書はこちらから。
事業内容について
有価証券報告書(2022年12月期)から、【事業の内容】は、コンシューマープロダクツ事業製品、ケミカル事業製品の製造、販売を主な事業としているほか、これらに附帯するサービス業務とされています。
「コンシューマープロダクツ」は我々がよく見る日用品、「ケミカル事業製品」はBtoB製品ですね。
ケミカル・・調べてみましたが、「油脂誘導体や界面活性剤、機能性ポリマーなどを軸として・・・」とありましたが、これどんなものなんでしょう?
どれもシャンプーや石鹸、オムツといった日用品の原料の一部ですね。
日用品と一緒に成長してきたということですね。
事業系統図を見ると、事業規模に応じて、コンシューマープロダクツは会社数が多く、ケミカルは相対的に少ないですね。
花王のHPをみると、中間流通(卸)は使わないとありました。これって珍しいことなんですか?
日用品にかかわらずだけど、メーカーにとって卸というのは、一緒に売上を作ってくれる(営業してくれる)パートナーだから、なかなか卸を飛ばして商売するのは難しいだろうね。
全国展開するにも自社製品だけでは物流効率が悪くなってしまうから、普通はできない。買い手側の小売店もまとめて商談してくれるほうが楽だからね。
一方で、中間マージンを卸に落とす必要があるのはメーカーにとってはデメリットなので、花王はそこを内製化したということですね。
なるほど、普通はできないんですね。花王の規模の大きさがなせる技ですね。
事業系統図・・・有価証券報告書では企業グループの商流が図として記載されています。ここで大まかな商流とグループ会社の機能を理解することができます。
業績について
規模が大きいので セグメント でそれぞれの規模感をみればいいですね~
売上が1兆5千億円、コンシューマープロダクツが1兆2千億円なので、ほとんどがこれなんですね。
でも営業利益はケミカルの構成比は高いかな。
損益計算書(P/L ぴーえる)・・会社の売上、売上原価、販売費、一般管理費、その他の臨時的な損失や収入が記載され、その期の最終的な利益が計算される会社の成績表です。有価証券報告書で最も重要な情報の一つです。
日用品は消費者に価格が直接影響するから、付加価値がないとすぐに値崩れしてしまうんだよね。原燃料の価格も上がっているので、経営環境としては難局といえるかもしれません。
ちょっと前に、花王が値上げ要請したら、売り場に置かない、みたいなニュースありましたね・・・
小売が強い業界なんですね
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
3万5千人の従業員、うち本社が8千人だから、80%ほどが子会社勤務なんですね。
化粧品の人数が多いですね。
やっぱり売り方が特殊というか、販売員さんも必要だし、売るには人のチカラが必要なんでしょうね。
気になる給与ですが、さすがの高水準ですね~。
勤続年数も長めですし。満足度の高さがうかがい知れます。
ところで最後の「多様性に関する指標」ってなんですか?いままでなかったです。
新しい基準で、上場会社は開示しないといけなくなったものですね。
女性管理職比率や、育休取得率など、これからは社風がデータでわかっちゃうから、会社としても真摯に取り組む必要があるね。
これは就職活動では結構大事な気がします・・
事業等のリスクについて
最後に、花王の「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
花王では、計15個のリスクが記載されています。
消費財メーカーとして一般的なものが並んでる印象ですね。
あえて取り上げるなら、やはり人財確保に関するリスクでしょうか。
有価証券報告書 事業等のリスクより
人財確保に関するリスク
(背景)当社グループは、経営計画を実行する上で、多様な人財が挑戦・共創できる場の創出に努めています。現在は、グローバルでの競争激化や日本における超高齢化社会の到来といった潮流に加え、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、従来に増して変化に柔軟に対応していく変革力が求められています。また、個人のキャリアや働き方に対する価値観がこれまで以上に多様化し、人財の流動化が社会全体でより一層進むと考えられます。 (リスクと影響)大きな環境の変化を先取りし、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や、変化を先導するリーダーの確保と育成が推進できない場合には、新事業・新製品開発におけるイノベーションの加速、中期経営計画「K25」の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループで最も重要な資産は「人財」であるという認識のもと、社員活力の最大化に向けて、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人財が、大きな挑戦と部門や国、組織を超えた共創により、能力と個性を最大限に発揮するための取り組みを推進しています。2021年より全員チャレンジと社内外での連携・共創強化を目的としOKRを導入しました。また、グローバル人財情報システムの活用や、様々な社員意識調査・アンケートの実施による組織力の向上、グローバル共通の等級制度・評価制度・教育体系・報酬ポリシーによる人財マネジネントや健康増進プログラム、柔軟で多様な就業環境と制度の整備等を実施しています。これらの取り組みに加えて、持続的な成長を支える人財の配置・育成や効果的な組織運営について、経営トップをメンバーとする人財企画委員会で毎月議論し、推進しています。
対応策、読んでも難しいですが、、定着率が高い(平均勤務期間が長い)ということは、うまく仕組みが回っているという現れですよね。
なかなかこの少ない紙面に載せきるのは難しいのでしょうね。人事の担当者目線で見ると、書きたいことを可能な限り詰め込んだ結果なのではないかと想像しますね。
詳しく知りたい方は、花王はIRが充実していますので、統合報告書などを覗いてみてください。
終わりに
日本の消費財メーカーは、海外に比して非常に安い消費者単価の中で、良いものを毎年送り出さないといけないという課題があります。その中でもトップランナーである花王が、今後生活を変えるような製品を期待したいですね。
掃除、洗濯、お風呂、化粧品、どれも生活の一部ですもんね。
革新的な製品を期待です!!
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
花王の歴史は明治時代、創業者・長瀬富郎(ながせ・とみろう)が洋小間物店を創業するところから始まります。24歳で石けんや歯みがき粉など日用品も扱う「長瀬商店」を創業しました。1887年のことでした。石けんといえば高価で高級な舶来品か、安価でも質のよくない国産品しかなかった時代です。良質の国産石けんをつくる!そんな長瀬の強い思いから「花王石鹸」は生まれました。ちなみに「花王」の名は、当時の化粧石けんが「顔洗い」と呼ばれていたことに由来するそうです。
よきモノづくりの系譜|古今東西の清浄文化史と生活に寄り添う花王のモノづくりの変遷をご紹介 (kao.com)