今回は、日本を代表する会社の一つである本田技研工業、通称ホンダについて 有価証券報告書 をざっくり読み解いていきたいと思います。
時価総額 は、2022年10月現在で5.9兆円、売上も14兆円という巨大企業です。
日経新聞による日本企業の時価総額上位ランキングでは20位に入っていますね。
同じクルマメーカーとしてはトヨタや日産と比較されることも多いですが、2輪車にも強みがあり、またホンダジェットなど航空機にも参入するなど、経営の方向性は異なるところがあります。
では早速みていきましょう。
有価証券報告書はEDINETや、各社のHPから見ることができます。
ホンダの有価証券報告書はこちらからどうぞ。
なお、日本の時価総額1位はトヨタ自動車です。
企業分析してみよう! トヨタ自動車㈱【7203】-TOYOTA- (事業内容/業績/給与/リスクなど)
事業内容は?
有価証券報告書から、【事業の内容】をみると、「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス」「ライフクリエーション事業及びその他」の区分に分かれていることがわかります。
まず筆頭に「二輪」がくることや、「ライフクリエーション事業」についてはトヨタと異なる特徴の一つでしょう。
では数字をみてみましょう。ここでは セグメント 情報を見ていきます。
営業収益(つまりは売上です。)の構成をみると売上の6割以上が四輪事業セグメントが創出しています。
一方で、営業利益を見てみると、売上が1/4しかない二輪事業が四輪事業以上の利益を叩き出しています。営業利益率も10%を超えており、収益の柱と言えそうです。
また金融サービス事業も四輪事業を超える営業利益となっていますが、実態としては金融サービス事業の営業利益のほぼすべてが四輪事業の販売に関連するものということなので、金融サービス事業=自動車ローン事業と言い換えることができそうです。これを勘案すれば、四輪事業(金融サービス事業を含む)は利益の半分以上を占めていますね。
トヨタ自動車も同じようにファイナンス大きくなってましたね!
自動車ローン事業は非常に安定した金融事業と言えますね。担保がリユース市場のある自社製品そのものであるため、貸し倒れのリスクも低いのでしょう。
切り口を変えて、地域別の情報も見てみましょう。
日本事業はぎりぎりの黒字ですね。なんと2021/3期は赤字だったんですね・・
売上増加で黒字を確保したものの、損益分岐点 に近い売上水準ということですね。
2022年はさらなる原料高の波が来ていますから、コストアップの影響は免れないでしょう。
生産・販売の状況について
では二輪、四輪事業セグメントを中心に少し深くみていきましょう。まずは販売実績です。
北米は四輪、アジアは二輪が突出していますね。
北米が稼ぎ頭ですが、これをみるとなんと半分が北米で稼いでいることがわかります。日本は10%程度しかありません。いかに米国がクルマ文化であるかがわかりますね。また北米は金融サービスの売上も突出しており、ローンで購入する割合が高いことが読み取れます。
これは借金に対する考え方の違いですね・・
次に生産実績をみてみましょう。
四輪事業の生産台数は252万台、同年度のトヨタの自動車事業の生産台数が815万台でしたので、クルマの生産台数では約1/3と、大きく水をあけられている状況です。
日本で見る限りではそこまでの差は感じないですが、グローバルでの売る力の差ということでしょうか。二輪事業は単価が全然違うとはいえ、クルマの4倍も売っているんですね。
スケールメリットは二輪事業では出ているものの、四輪で効率よく稼ぐには、販売台数がまだ足りないということでしょう。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
トヨタがグループで37万人ということですから、売上との比較でいうと人員数は多いかも?
親会社の平均年齢はトヨタよりも4歳ほど高く、平均勤続年数も6年ほど長くなっていますね。
退職率は低く、良い会社といえる半面、人員の流動性は低いと言えるかもしれません。
給与も100万円ほど差はありますね。
稼ぐ力の差がここに表れていますね。
事業のリスクについて
最後に、ホンダが考える事業のリスクについてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
ホンダでは、計13個のリスクが記載されています。
高いEV比率目標を掲げているため、消費者の嗜好の変化といった内容が厚く記載されているかと思えば、意外と「市場環境変化リスク」「環境に関わるリスク」はあっさりとしています。
なんと「四輪のEV(電気自動車)、FCV (燃料電池自動車)の販売比率を2040年
にはグローバルで100%をめざす。」と宣言されています。
ホンダ、2040年に世界販売100%をEV/FCV 高い目標に挑む
一方で、「他社との業務提携・合弁リスク」はあまり見ないリスクの一つです。
当社グループのさらなる、電動化の推進・安全運転支援技術の普及と進化・新事業への取り組みに関する中長期的な取り組みを進めるにあたっては、業務提携などの活用の重要性は高まっています。業務提携などにおいて、当事者間で業務上の不一致、利益や技術の流出、意思決定の遅れ、業務提携先などの業績不振が生じた場合、あるいは提携内容の変更や解消が生じた場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
事業等のリスクより
今後EVになり、内燃機関がなくなったときに、クルマという製品におけるソフトウェアの比重は高まっていることは間違いないでしょう。そこには外部の力も必要で、リスクもあるということですね。
エンジンといえばホンダで、F1のイメージもあるので、内燃機関をやめるとなればファンは複雑かもしれませんね・・。
終わりに
自動車産業の100年に一度の大変革期とされています。
トヨタをはじめ、エンジン車の次に何を作るか、が大きな課題になっています。果たしてそれがクルマである必要もないのかもしれません。
エンジンに強みがあるホンダが次に何を作るのか、底力が試される時代が来ているといえそうです。
ホンダのすごいところは、ホンダジェットやASIMOなど、畑違いでも世界初を創り出せるところだと感じます。三菱のMRJが挫折した一方で、ホンダジェットは気づけば小型ジェットのトップランナーになっています。
今後はエアタクシーとしての活用もありそうですね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。日進月歩。