今回は、日本の電器メーカーの雄ともいえるソニーについて有価証券報告書をザクっと読み解いていきたいと思います。
ソニーといっても、実際はホールディングス制をとっているので、正確にはソニーグループ株式会社ですね。
時価総額は、2023年1月現在で14兆円と、”プレステ”を世界中で販売するメーカーでありながら、ソニー生命やソニー銀行などの金融業も主力事業として展開していますね。
最近ではクルマを作るなど、新たな事業モデルにもチャレンジしていますね。
身近なところだと、プレステ5は超人気で品切れが続いていました・・
個人的にはソニーといえば、パナソニックや東芝といった総合電器とは異なるスタイリッシュなイメージがなんとなくありますね。
今回みていくソニーグループの有価証券報告書はこちらから。
事業内容について
有価証券報告書(2022年3月期)から、【事業の内容】は、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、イメージング&センシング・ソリューション、金融、その他とされています。
「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション」はテレビやスマホ、「イメージング&センシング・ソリューション」はイメージセンサー、とされていますね。
イメージセンサー・・って何?
と思ってしらべてみたら、カメラの基幹部品なんですね。
事業系統図をみてみましょう。
これだけの規模のグループですが、組織構造はシンプルですね。会社数もあまり多くなさそうです。
事業系統図・・・有価証券報告書では企業グループの商流が図として記載されています。ここで大まかな商流とグループ会社の機能を理解することができます。
業績について
規模が大きいので セグメント でそれぞれの規模感をみればいいですね~
売上が9兆9千億円、ゲーム&ネットワークサービスが筆頭ですが、いずれのセグメントも1兆円を超えてますね。
利益をみてもどの事業も儲かっているのがわかります。
損益計算書(P/L ぴーえる)・・会社の売上、売上原価、販売費、一般管理費、その他の臨時的な損失や収入が記載され、その期の最終的な利益が計算される会社の成績表です。有価証券報告書で最も重要な情報の一つです。
新しい事業に挑戦しながら、損失のでている事業がないというのは、実はすごいことです。
東芝やシャープ、パナソニックなど名だたる大手メーカーはいずれも赤字事業を抱えたり、今も抱えています。
過去の 事業ドメイン の見極めが、この結果につながっていると言えます。
確かに、どこの会社も順風満帆とはいっていないですね・・
年収、平均勤続年数について
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
9兆円の売上のある会社としては、従業員数は少なく感じますね。
やっぱりゲームや映画、音楽などコンテンツビジネスが主力で、純粋な製造業ほどの工場や人員は必要ないということですね。
パナソニックの従業員数が24万人ですから、それに比べると半分以下ですね。
売上はパナソニックよりソニーのほうが大きいから、そう思うと、めちゃくちゃ効率よく稼いでいるってことですね~
事業等のリスクについて
最後に、ソニーグループの「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
ソニーグループでは、計21個のリスクが記載されています。
各項目がとても丁寧に書かれていて、しっかりと考え抜かれたものだということが見て取れます。ぜひ一度読んでいただきたいですね。
特に読み応えのあったものをピックアップしてみます。
(2)ソニーは収益又は営業利益率の低下につながりかねない一層激化する競争を克服しなければなりません。
ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、単一又は数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にわたって、業界の既存企業や新規参入企業などの多くの企業と競争しています。また、潜在的には現在ソニーに製品を供給している企業も競合相手となる可能性もあります。これらの既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、ソニーの財政状態及び業績は、当該既存及び新規参入の競合他社に効率的に対抗する能力にかかっています。ソニーが直面する競合要因は業種により異なります。例えば、エレクトロニクス領域において、ソニーは、競合他社との間で価格や機能を含む様々な要素で競争しています。また、音楽分野及び映画分野では、アーティスト、作詞家、俳優、ディレクター、及びプロデューサーといった才能ある人材ならびに製作・制作、取得、ライセンス、又は配信されるエンタテインメント・コンテンツを得るため競争しています。競合他社との価格競争は、価格の下落に比例して費用が下落しない場合には利益率の低下につながり、また、才能ある人材と魅力的なコンテンツ獲得競争も、そのような才能ある人材やコンテンツの獲得に必要とされる費用の増加を増収により埋め合わせできない場合には、収益力の低下につながる可能性があります。さらに、イメージセンサーのように、現在ソニーが強い競争力を有していると考えられる製品においても、競合他社の技術力の向上により、ソニーがその優位性を保てなくなる可能性もあります。また、一般消費者向けエレクトロニクス製品においては、絶えず変化し、消費電力やその他の気候変動への影響を最小限に抑える製品への消費者の関心の高まりなどを含む、一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くが同種の製品をすでに保有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し、競争力ある価格と特長を有する、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。
ソニーは、様々な一般消費者向け製品において、一層激化する競合他社との価格競争にともなう価格低下圧力の高まり、小売業者の集約化、新規の販売・流通チャネルの構築、及び製品サイクルの短期化に直面しています。音楽分野及び映画分野における業績は、予測が困難である作品に対する世界中の消費者からの支持による影響、同時期もしくは近接した時期に公開された他の競合作品による影響、ならびに、ソニーの作品に代わり消費者が利用可能な娯楽及びレジャー活動に影響を受ける可能性があります。例えば、2020年の年初以降の新型コロナウイルス感染拡大を受け、世界各国で外出制限が行われたことにより、消費者行動への影響が出ています。
有価証券報告書 事業等のリスクより
仮に、ソニーが、技術その他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなった場合、ソニーの一般消費者向け製品に対して頻繁に影響を及ぼす継続的な価格下落又はその事業に影響を及ぼすコスト圧力について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルや消費者の嗜好が変化した場合、又はソニーの一般消費者向け製品の平均価格の下落スピードが当該製品の製造原価削減のスピードを上回った場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
本当に多くのことに対応しないと、競争に勝てないということですね・・
経営というのは、「意思決定の連続」ですから、会社は常に「何をやって何をやらないのか」、判断を迫られているわけですね。
「意思決定の速さが重要」という意味がちょっと分かった気がします!
終わりに
日本のお家芸であった電器メーカーで気を吐いている会社の一つではないでしょうか。GAFAMのような米国テックが市場を席捲していますが、エンタメやゲームといったコンテンツビジネスを起爆剤に、まだまだ日本企業のポテンシャルは大きいと思います。
やっぱり日本のゲームには期待したいですね!!
またソニーにはウォークマンのような、大ヒット製品も期待したいですね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
戦後すぐの1946年に設立され、そこから電器製品、保険、音楽、エンタメ、銀行と、時代に合わせて変化してきたのがソニーのすごいところ。マイケルジャクソンと合弁会社を作ったり、一世を風靡した「ウォークマン」など、沿革をみるだけで変化の歴史がみてとれます。