今回は、Indeedやじゃらん、ホットペッパー、ゼクシィ、SUUMO、リクナビから人材派遣まで、多くのメジャーコンテンツを持つリクルートホールディングスについて 有価証券報告書 をザクっと読み解いていきたいと思います。
売上は2022年3月期で2兆8千億円、時価総額は2022年11月現在で7兆円と、日経新聞による日本企業の時価総額上位ランキングでも10位(2022/11/7現在)に入っていますね。
知名度は抜群。社員の方は皆さんエネルギッシュというイメージがありますね。
確かにリクルート出身で独立や起業される話はよく聞く気がします。
若い会社というイメージがありますが、実は創業は意外と古く、創業60年を超えています。
1960年に大学新聞に求人広告を掲載することを目的として創業された「大学新聞広告社」が前身です。
創立時も、ヒトと会社をつなぐところから始まったんですね~
今回みていくリクルートホールディングスの有価証券報告書はこちらから。
事業内容は?
有価証券報告書(2022年3月期)から、【事業の内容】は「HRテクノロジー事業」「メディア&ソリューション」「人材派遣」とされています。
なお有価証券報告書はメディアを扱う会社だけあってスタイリッシュな印象です。
- HRテクノロジー事業・・・
Indeed及びGlassdoor(求職者が求⼈情報を検索したり、企業に関する情報を収集したりすることができるオンラインプラットフォーム)を運営。Indeedは毎⽉約2.5億⼈以上の求職者が利⽤する世界最⼤の求⼈情報検索サイト。 - メディア&ソリューション・・・
住宅分野はSUUMO、美容分野はHotPepper Beauty、結婚分野はゼクシィ、旅⾏分野はじゃらん、飲⾷分野はHotPepperグルメ等。就職活動を⾏う学⽣向けのリクナビ、転職活動を⾏う社会⼈向けのリクナビNEXT、アルバイトやパート等の求職者向けのタウンワーク等を運営しています。リクナビ、リクルートエージェント等もここに入ります。 - 人材派遣・・・
日本では㈱リクルートスタッフィング及び㈱スタッフサービス・ホールディングス等を展開。欧州、米国および豪州でもサービス提供。
どのサービスも耳にしたことのあるものですね。一番身近なのはメディア&ソリューション事業かな~。
そういう意味では、一般消費者をサービス提供事業者をつなぐということができている。非常に認知度の高いプラットフォームを多く持つといえますね。
HRテクノロジー事業があっさりして見えますね。
人材派遣は海外領域も多くありそうです。
これだと規模感がわかりませので、セグメントの注記をみていきましょう。
売上規模は人材派遣事業が大きく、セグメント利益ではHRテクノロジー事業が半分以上を稼いでいますね。HRテクノロジー事業の利益率が非常に高くなっています。
収益を分解したのがこちら。
やはり人材派遣事業は海外展開も大きくなっていますね。半分は欧州、米国及び豪州となっています。アジアがないのは意外ですね。
経営戦略について
グループ全体の経営戦略として次の2つが挙げられていますね!
Simplify Hiring – ⼈材マッチング市場における採⽤プロセスの効率化
当社は、求⼈広告及び採⽤ツール市場、⼈材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採⽤オートメーション市場及び⼈材派遣市場の総称を⼈材マッチング市場と定義し、求職者がより速く且つ容易に仕事を得られることや、企業クライアントの採⽤に係るコストと時間を削減することを通じた⼈材マッチング市場における採⽤プロセスの効率化に取組んでいます。
有価証券報告書 事業の状況より一部抜粋
3つの事業が、データ、⾃動化及びテクノロジーを活⽤しながら連携し、求職者と企業クライアントへの選択肢の提案の質とスピードを劇的に向上させることで採⽤プロセスを簡便化し、双⽅に更なる価値を提供することを⽬指しています。
⻑期的には、⻑年蓄積されたマッチングデータとAIや機械学習を通じて得られた求職者及び企業クライアントの採⽤に関する考え⽅といった情報を組み合わせることで、ボタンをクリックするだけで求職者と企業クライアントのマッチングができるような、より速く効率的な採⽤を⽬指します。・・・
Help Businesses Work Smarter – SaaSソリューションによる⽇本国内企業クライアントの業績及び⽣産性向上
メディア&ソリューション事業は、SUUMOやHotPepper Beauty、タウンワークをはじめとする販促・⼈材領域のオンラインマッチングプラットフォームと、集客・顧客管理、採⽤や⼈材管理及び決済業務の効率化のための豊富なSaaSソリューションの提供を通じて、企業クライアントの業績及び⽣産性の更なる向上の実現を⽀援しています。
有価証券報告書 事業の状況より一部抜粋
今後は業務・経営⽀援ツールであるSaaSソリューションを更に拡充し、⾦融サービスを含む、企業クライアントの事業運営に係る全ての経済活動を⽀えるエコシステムを構築していきます。
・・・
一つ目の「Simplify Hiring」はHRテクノロジー事業、二つ目の「Help Businesses Work Smarter」はメディア&ソリューション事業にリンクしていますね。
見る限り、HRテクノロジーのIndeedなどは、AIや自動化技術が重要で、文系人間にはついていくのが難しそうです・・
確かに、リクルートといえば、新規事業がどんどん生まれるところに強みがあると思いますが、1アイデアから社内起業して・・というのは2つ目のメディア&ソリューション事業がその役割になっているといえるかもしれません。
ただボタンひとつで精度の高いベストなマッチングができるようになれば、よりよい働き方ができるようになりそうですね!
クライアントのすべての経済活動を支える エコシステム、というのもすごい発想ですよね。
普通は事業領域を絞りそうなものですが、なんでもやる、という社風が表れている気がします。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
事業拡大のため、1年で5千人近く増やしているとありますね!成長への意気込みが見えます。
ホールディングスの人員は管理部門のみですね。
平均勤続年数はやはり短いといえます。
メーカーなどは15年超もざらにみられるますので。
ノウハウを身に着けて、自分でビジネスを起業したいという方にはとても勉強になる会社ではないでしょうか。
人材派遣事業では、海外で働く選択肢もありそうですね。
(給料良いのにやめちゃうのもったいない気もするけどな・・)
一例として、メーカーの代表格、日立の分析はこちらからどうぞ。
企業分析してみよう!㈱日立製作所【6501】-HITACHI 総合電機大手-(事業内容/業績/給与/リスクなど)
事業のリスクは?
最後にリクルートの「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
リクルートでは、計24個のリスクが記載されています。
その中でもグループトップリスクが明示されているのがわかりやすいですね。
データセキュリティ・データプライバシーに関連するリスク
当社グループでは、すべてのSBUにおいて、多くの個⼈ユーザーの情報を含む個⼈情報を取得、管理、活⽤をしています。各国法令を遵守することはもちろん、社会からの期待に反せず個⼈ユーザーのプライバシーを尊重し、保護することが責務であると考えています。
有価証券報告書 事業等のリスクより
万が⼀でも個⼈情報に関する事件事故が⽣じた際には、個⼈ユーザーの皆様に多⼤なご迷惑をかけるだけでなく、当社グループのブランドの価値及び信⽤やサービスへの信頼を⼤きく棄損し、また、当局から業務停⽌命令、罰⾦その他の処分を受けることや、個⼈ユーザー⼜は企業クライアントから訴訟を提起されること等により、当社グループの経営成績等に甚⼤なダメージが⽣じかねないと認識をしています。そのためデータセキュリティ・データプライバシーに関連するリスクの取扱いは、当社リスクマネジメント委員会及び各SBUのリスクマネジメント委員会においてトップリスクと認識し、様々な対策を実施しています。
データセキュリティについては、専門部署である「Recruit-CSIRT」を設置するなど、相当なリソースを割いていることがうかがえます。
データセキュリティに興味がある方には、最先端の対応を経験できそうですね~
そもそも即戦力の採用のみかもですが・・・
実際、インシデントが発生した場合の損失は計り知れず、しっかりお金をかけて対応しないと会社の存続にかかわる部分です。
その点もしっかり認識するとともに、アピールもされていると言えますね。
終わりに
日本は起業家が少ないと言われており、起業家マインドを育ててくれるリクルートのような会社の、社会に対する貢献度は高いと思います。起業することで雇用を生みだし、消費を促進し、消費は企業を助ける良いサイクルにつながります。まさにエコシステムですね。
私も一国一城の主を目指してみたいという気持ちはあります!
自社従業員は優秀な人ほど独立していくという環境でも、どんどん新しいビジネスを生み出していくシステムが出来上がっているのは、他に例を見ないかもしれませんね。
今までなかったようなサービスに、今後も期待したいです。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
1974年創業ですので、まだまだ若い会社です。全く会社やブランドを宣伝しないのにここまで知名度の高い BtoB メーカーは珍しいですね。創業者である滝崎氏は取締役名誉会長として、いまだに君臨しています。