今回は、日本一平均給与の高いことで有名なキーエンスについて 有価証券報告書 をザクっと読み解いていきたいと思います。
売上は2022年3月期で7,551億円、時価総額は2022年11月現在で13兆円と、日経新聞による日本企業の時価総額上位ランキングでトヨタ、NTTに次ぐ3位(2022/11/7現在)に入っていますね。
とにかく営業のスピードが速い、というイメージがありますね。
東京商工リサーチによる調査によると、平均給与ランキングでは2位ですね。
なんと2,182万円だそう・・・
1位はM&Aキャピタルパートナーズですので、波のあるビジネスであることを考えると、メーカーであるキーエンスが実質1位といってもいいと思います。大手商社も抑えての給与ですので、どのような働き方なのかは気になるところですね。
今回みていくキーエンスの有価証券報告書はこちらから。
事業内容は?
有価証券報告書(2022年3月期)から、【事業の内容】は非常にシンプルです。「電子応用機器の製造及び販売」、「その他」とされています。
なお有価証券報告書もかなりシンプルです。近い製品を取り扱う㈱デンソーで164ページ、オムロンで187ページ、キヤノン㈱で178ページに対して、キーエンスはたったの74ページです。
投資家にこびない姿勢がすごいですね・・
この規模の会社としては驚くほどIRにも力を入れていないように思いますね。
それだけ本業のみに注力しているということでしょう。
有価証券報告書にも経営方針が記載されていますが、「付加価値の創造」「事業効率」に貢献しない仕事はしないという姿勢がこのあたりに表れていると感じます。
(1)経営方針
有価証券報告書 事業の状況より
当社グループは「会社を永続させる」、「最小の資本と人で最大の付加価値を上げる」という考えのもと、全社員が一丸となり「付加価値の創造」と「事業効率」を追求してまいりました。社会における役割を的確に把握し、世の中の役に立つ付加価値の高い商品を生み出すことで社会に貢献し、持続的な成長と高い収益性の実現を常に目指していくことが、当社グループの経営における基本方針です。
事業系統図も非常にシンプルですね。
連結子会社も28社と少ないです。
この規模の会社ではかなり少ないと言えますね。
生産は協力会社に委託している ファブレス な会社であることは一つの要因ではあるものの、それでも少ないです。
海外展開もかなりしているみたいだけど、どのくらい売上があるんでしょうか??
地域別の売上が開示されています。
この規模にして、単一セグメントという、これもまた珍しいケースといえます。
地域別でもグローバルに売上を計上していますね。海外比率6割といったところですね。
業績、稼ぐ力について
セグメントが単一なので、ここではシンプルに 損益計算書 をみればいいですね。
人件費がいったいどうなっているのか、みていきます!
粗利率 が8割越え・・。しかも日本一高い給与水準で、営業利益率も50%越え・・。
いったいどういう仕組みなんでしょう。。
顧客のニーズに合った製品開発と、即納体制が高い付加価値を生んでいるということですが、それでも信じがたい利益率です・・
企画・開発力(新製品の7割が「世界初」「業界初」)、ファブレス生産(設備投資を抑えて、最適な工場を選定)、グローバルダイレクトセールス(ニーズの把握と中間マージンの排除)がビジネスモデルの核とされています。
どれも簡単なことではないですよね・・・
企画・開発一つとっても、新製品を生むためには営業担当のニーズの汲み取る力が必要ですよね。どんな教育を受けているのか、気になります。
そうですね。ファブレス生産体制についても品質の問題、安定供給の問題、協力先の労働力の問題など、即納体制とするには協力先の完全なバックアップが必要です。
言うは易しですが、資本関係のない会社との関係構築は相当難しいことです。
ちなみに販管費の半分は給料でした。
無駄なお金は使わないというのもありそうですね。
まさに労働生産性を突き詰めているといえますね。
高い給与で、優秀な人材を確保し、高い利益率を生んでいます。
真似するのは簡単ではないものの、お手本とすべきモデルでしょう。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
でました!2182万円・・
平均年齢も若いですね~
平均給料はものすごく高いですが、当然、完全成果主義ということもありますので、それについていくだけの力量が試されるでしょうね。
そんな簡単なわけはないですよね~(でもやっぱり魅力的!)
事業のリスクについて
最後にキーエンスの「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
キーエンスでは、計8個のリスクが記載されています。
リスクの記載も少ないですよね。
ここでも効率最重視!
特に重要なものとしては「情報セキュリティ」「商品の品質」といったあたりでしょうか。
(3)情報セキュリティ
当社グループは事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しております。当社グループでは当該情報の盗難・紛失などを通じて第三者が不正流用することを防ぐため、社員及び委託先の情報リテラシー向上とITガバナンスの強化に取り組んでおります。また社内情報システムへの外部からの侵入防止対策も講じております。しかし、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性を完全に回避することは困難であり、また想定した防御レベルを上回る技術によるサイバー攻撃等などにより、当該情報の破壊・改ざん・流
出・社内システム停止等が引き起こされる可能性もあります。これらの事態が起きた場合には、適切な対応を行うための費用負担が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。(5)商品の品質
有価証券報告書 事業等のリスクより
当社グループは日本国内及び北米・中南米、欧州、アジアにもわたって事業活動を展開しており、国内外を問わず当該国の商品に関する法規制を遵守しなければなりません。当社グループではISO規格認定された品質マネジメントシステム・環境マネジメントシステムの構築による品質向上努力の継続、及びファブレス体制下でも当社の品質管理部門が生産を行う協力工場と連携するなど生産に深く関与することで責任ある商品の提供に努めております。しかし、想定しえない多様な環境下での商品使用による重大な品質問題や現時点での技術・管理レベルを超える事故などにより大規模なリコールが発生した場合や現行法規制の急激な強化・変更が生じた場合には、対応コストの増加を招き、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
世界初・業界初の製品開発には、特許をはじめとした技術情報も多いでしょうし、これだけの高い利益率を確保するためには、いくら顧客サービスで尽くしても、品質がついてこないことには売上は確保できないということですね。
優秀な人材確保、とかではないのが意外でした。
高い給与があるので、人材確保にはリスクを感じないということですかね・・(ある意味わかりやすい・・)
終わりに
高い給与水準、それに見合った成長の機会もあり、就職市場ではとても人気の高い会社の一つですね。ここまで尖った会社は珍しく、参考にならない若しくは異常値扱いされることも多い同社ですが、これくらい突出した会社がどんどん出ててきて、日本経済を活性化させてもらいたいですね。
給料は抜きにしても、一度キーエンスで働いてみたいと思いました!
日本にはすごく高付加価値な製品を作っていても、高すぎる利益率は是とされないような空気から、安売りしてしまっている企業も多くある気がします。
キーエンスのように、良い製品・サービスには自信をもって高い値段で売る、従業員にも還元するということができれば経済も良くなっていくのではないかと思いますね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
1974年創業ですので、まだまだ若い会社です。全く会社やブランドを宣伝しないのにここまで知名度の高い BtoB メーカーは珍しいですね。創業者である滝崎氏は取締役名誉会長として、いまだに君臨しています。