今回は、炊飯器といえば「象印」というイメージある、象印マホービン株式会社について有価証券報告書をザクっと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年10月現在で1,110億円と、総合家電メーカーに比べると規模は小さいものの、知名度は抜群です。
炊飯器や魔法瓶は象印というイメージがありますね。
寒くなってきたので、魔法瓶は重宝します。
また今の炊飯器は本当においしく炊けます!
特定のカテゴリーで圧倒的な存在感を誇っており、カテゴリーリーダーを狙う戦略ということですね。
今回みていく象印の有価証券報告書はこちらから。
なお、日本の時価総額1位はトヨタ自動車です。
企業分析してみよう! トヨタ自動車㈱【7203】-TOYOTA- (事業内容/業績/給与/リスクなど)
事業内容は?
有価証券報告書(2021年11月期)から、【事業の内容】はご想像のとおりで、調理家電製品、リビング製品、生活家電製品の製造および販売とされています。
事業としては家庭用品以外の重要性が低いため、セグメントに分けた情報は開示されていませんね。
事業系統図をみると、製造、販売、物流、修理の機能で会社が分かれていますね。
非常にわかりやすいグループ体制になっていますね。
組織体制が分かりやすいというのは、実は非常に重要なことです。
複雑な組織体制だと、各社の守備範囲やレポートラインも不明瞭になるとともに、意思決定も遅くなりがちです。また法人が存在することで固定的なコストもかかってしまいます。
事業系統図・・・有価証券報告書では企業グループの商流が図として記載されています。ここで大まかな商流とグループ会社の機能を理解することができます。
海外もあるみたいだけど、どのくらい売上があるんでしょ??
地域別製品別の売上マトリックスが開示されています。
結構海外比率が高いんですね~。25%くらいは海外向けですね。
たしかにコロナ前はインバウンドで、象印のステンレスボトルや炊飯器がよく売れていた気がします。やっぱりメイドインジャパンのブランド力ですね。
業績・財政状態は?
セグメントが単一なので、ここではシンプルに損益計算書をみればいいですね~
売上が776億円、粗利率は3割ほどですが、炊飯器も魔法瓶も大きな技術革新が起きにくそうなカテゴリーですし、堅実なP/Lですね。
損益計算書(P/L ぴーえる)・・会社の売上、売上原価、販売費、一般管理費、その他の臨時的な損失や収入が記載され、その期の最終的な利益が計算される会社の成績表です。有価証券報告書で最も重要な情報の一つです。
長年培った製品力はもちろんですが、しっかりイメージ通りの製品を世に送り出すマーケティングの力も大きいと思います。
安定して利益を出しているので、B/Sも強固な財務状態となっているか、確認してみましょう。
左側が「資産(お金をどう使ったか)」、右側が「負債・純資産(どこからお金を調達したか)」を表しています。
純資産は大きく、「株式発行による調達」と、「過去の利益の累積」で構成されています。
実質無借金経営といえそうです。資産の部をみると少し売上債権が大きいようにも感じます。回収サイトが2〜3ヶ月はありそうです。在庫もも回転期間が3〜4ヶ月ほどはありそうですので、運転資金も一定程度必要なビジネスというのが分かります。
固定資産を見ると、かなり減価償却が進んでいそうですね。建設仮勘定も少ないですし、将来の償却負担は軽いと言えそうです。しばらくは利益体質の経営が可能ということでしょうか。
固定資産は多ければよいというわけではないんですね・・
将来の費用になっちゃうわけですね。
もちろん少ないほうがといいというものでもなく、成長のために設備投資は当然必要です。
特に大規模投資となると、まさに経営者の判断が重要となる領域になります。
建設仮勘定とは…現在、建設中で稼働前の資産。稼働前のため減価償却は開始しておらず、稼働時に、建物や機械装置などの固定資産勘定に振替え、減価償却を開始する。会社の進行中の設備投資金額が読み取れる。
大株主は?
「大株主の状況」をみれば、株主構成がわかります。
オーナー企業 かどうかも、ここで確認可能です。
代表取締役社長が第2位になっていますね。市川家がオーナー一族ということかしら?
そのようですね。市川性の方が複数名、名を連ねているのと、財団や、資産管理会社もありそうな感じです。大きな影響力を持っていると想像できますね。
オーナー企業とは…明確な定義はないが、創業家が株式の多くを保有しており、代表取締役も務めている場合はオーナー企業といえる。所有と経営が一致した会社のこと。大胆な意思決定が可能である一方、ガバナンスをどうきかせるかは課題となることが多い。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
グループ会社数も少ないためか、半分が親会社勤務ですね。
平均勤続年数は長め、平均年齢もやや高めといったところでしょうか。
従業員のロイヤルティの高い会社と言えそうです。コロナ禍でも安定して利益を出していますし、安心感をもって働けるのかもしれませんね。
なお、年収で有名なのはキーエンスです。
キーエンスってどんな会社?業績は?年収や勤続年数は?将来性やリスクは?
事業のリスクは?
最後に、象印マホービンの「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
象印では、計12個のリスクが記載されています。
特に重要なものとしては「新製品の開発について」「競合他社との競争について」といったあたりでしょうか。
毎年新製品を出していかないと、競合に押されてしまうということですね。
調理用家電なんて、日本勢だけでも大きな会社が多くありますし・・
炊飯器もステンレスボトルも、もうすでにかなりの性能ですし、画期的な機能を持たせるというのは何か目線を変える必要がありそうですね。
炎舞炊き、本当においしいです。これ以上お米をおいしくするのは難しいかも・・・
競合はいずれも大手で、競争は激しいという環境ですから、やはりブランドが非常に大切といえそうですね。
終わりに
お米文化の日本においては欠かせない炊飯ジャーなどは、文化を守るという意味でも非常に大切な製品といえるかもしれません。毎日使うものですから、壊れにくいは同然で、そのうえで良い機能の製品を期待してしまいますね。ゲームチェンジのなさそうなカテゴリーだからこそ、既存の常識を壊す製品がでてくればインパクトは大きいと言えるでしょう。
私は加湿器も愛用してます!!
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
商品名やブランドを会社名としている会社も多くありますね。マホービンを会社名にしている会社も多くあり、タイガー魔法瓶などが有名です。なお魔法瓶メーカー本社は大阪に集中しており、地場産業と言えそうです。