今回は、不動産デベロッパーの最大手、三菱地所株式会社について有価証券報告書をザクっと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年10月現在で2兆7千億円、三井不動産と双璧をなす不動産の巨人ですね。
三菱財閥の流れをくむ、超大手ですね。戦前、三菱合資会社の不動産部門を切り出したのが始まりです。
時価総額が三井不動産と近似している(2022/10月時点)のが面白いですね。
証券番号は、三井不動産が8801、三菱地所が8802とならんでおり、どうしても比べてしまいがちですが、それぞれに強みがあります。
今回みていく三菱地所の有価証券報告書はこちらから。
事業内容は?
有価証券報告書(2022年3月期)から、【事業の内容】をみると、「コマーシャル不動産」「住宅」「海外」「投資マネジメント」「設計監理・不動産サービス」「その他」の区分に分かれていることがわかります。ざっくりとしたイメージとしては下記のような感じです。
- コマーシャル不動産・・オフィスビルを中心に、商業施設・物流施設・ホテル・空港など、あらゆるアセットタイプの開発・賃貸・運営・管理
- 住宅・・マンション(ザ・パークハウスシリーズ)など
- 海外・・不動産開発・賃貸など
- 投資マネジメント・・不動産投資に関するサービス
- 設計監理・不動産サービス・・建築・土木工事の設計監理、各種工事請負、不動産仲介など
- その他・・グループのシステム部門など
やはり規模が大きすぎて、全体像が見えにくいので、数字からブレイクダウンしていきましょう。
セグメントからですね!
ちなみに三井不動産は海外は別建てしていなかったのに対して、三菱地所のマネジメントは海外を別の単位で管理しているのがわかります。
マネジメントアプローチ・・・有価証券報告書ではセグメント別の業績を記載する必要がありますが、セグメントはマネジメントアプローチの視点で作成することとされています。マネジメントアプローチとは、経営者の視点で作成するというルールです。
コマーシャル不動産と住宅、海外で9割の売上を創出していますね。
利益は半分以上がコマーシャル不動産が稼いでいるようです。
セグメント資産でそれぞれの事業資産(割いているリソースの規模)がわかります。これを見ると資産の9割近くがコマーシャル不動産事業ですね。
また事業その中でも主力の不動産賃貸については「丸の内オフィス」が別建てで、そのほかは「東京(丸の内以外)」と「東京以外」「アウトレット」に区分されています。
特に東京に強いというのがよくわかりますね。
確かに三井不動産とは強みが異なりそうです。
どんな物件を持ってるの?
不動産投資の会社ですので、少し深くみてみましょう。有価証券報告書には「主要な設備の状況」が記載されています。
イメージとしてほんの一部を抜粋していますが、面白いほどに東京都千代田区の建物が並んでいます。
・・・どれも超一等地ですよね。東京に強いは伊達じゃないですね。
不動産の時価(含み益)について
不動産会社なら見ておきたい注記があるので、見ておきましょう。
これだけの規模の不動産を所有していると、所有する賃貸不動産に含み益や含み損があるかどうかを確認することで、財政状態の良し悪しが変わることもあります。
賃貸等不動産の時価注記・・・有価証券報告書には所有する賃貸不動産(貸手)の時価を記載する項目があります。現在の会計基準では、固定資産は取得原価をベースに貸借対照表に記載がされますが、ここでは、貸借対照表に表れない含み損益が開示されます。
連結貸借対照表計上額が、貸借対照表(B/S)つまりは決算書に記載されている金額です。一方で、「連結会計年度末の時価」は決算日時点の時価を表しています。つまり両者の差額が含み損益になります。
三菱地所の場合は、3兆円の含み益!!があるということです。
そういえば三井不動産も同じくらいの含み益でしたね・・。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
親会社の平均勤続年数は17年と、三井不動産よりかなり長く見えますね。それぞれグループ会社も多いので、人員計画には差がありそうです。
平均給与はさすがの高収入です(三井不動産とほぼおなじ)・・
事業のリスクは?
最後に、三菱地所の「事業のリスク」についてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
三菱地所では、計11個のリスクが記載されています。
固有のものとしては「(3)不動産市況悪化」のリスクでしょうか。
金利上昇は三井不動産も同じでしたね。
不動産市況悪化も同じなのでは?
三菱地所の場合は、特に東京の賃貸オフィス市場、分譲マンション市場、開発計画について、言及されているのが印象的です。
東京に強いということは、東京が不況になると影響が多いということですね~
終わりに
東京一極集中が言われて久しいですが、やはり日本のアイコンとしての東京の価値は高く、しばらくは状況は変わらないといえそうです。これから再開発が進んでいくことで東京がどう変わっていくのか、その中で果たす役割は大きそうですね。
確かに東京がさびれるようだと日本が心配です・・。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
日進月歩。
丸の内が荒野だった明治23年に、明治政府の意向もあり、一帯を莫大な金額で買い取ったのが三菱地所の起源のようです。会社の利益よりも、日本の将来を考えた投資だったのですね。三菱地所の歴史はこちらからどうぞ。