今回は、ゼネコンの中でも特に規模の大きい「スーパーゼネコン」の一角を占める鹿島建設について、 有価証券報告書 をざっくりと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年10月現在で6千7百億円、売上も2022年3月期では2兆円。土木・建設に少しでもかかわる機会のある方であれば、聞いたことのある会社ではないでしょうか。
では早速みていきましょう。
有価証券報告書 は EDINET や、各社のHPから見ることができます。
鹿島建設の有価証券報告書はこちらからどうぞ。
スーパーゼネコンとは?
ゼネコンなかでも特に規模が大きく売上が1兆円を超える以下の5社がスーパーゼネコンと言われています。
- 大林組
- 鹿島建設
- 清水建設
- 大成建設
- 竹中工務店
大成建設のみ、創業家からは経営が離れた非同族会社です。また竹中工務店はこの規模にして非上場会社であるという特徴があります。
歴史的に、ゼネコンは同族会社が多く、今回の鹿島建設も例外ではありません。近年では非同族出身者が社長を務めていますが、本家である鹿島家、分家である渥美家、石川家、小泉家は重要な意思決定にはいまだ影響力を持つとされています。
鹿島建設の創業家についての興味深い記事を発見しましたので、興味のある方はこちらもご覧ください。
【企業研究】鹿島の創業家物語 女系家族への大政奉還は「ジ・エンド」
会社の経営を血でつなぐというのは簡単ではないですよね。
会社を継ぐための後継者への教育はもちろんですが、後継者が社長適齢期にちょうどバトンタッチできるというのは稀なケースでしょう。ましてそれを何代にもわたって続けるのは現実的ではなく、多くの同族系の大会社は、時代を経て社会の公器へと変わっていっています。
経営の神と言われた松下幸之助のパナソニックも、創業家からは離れた経営に移っています。
パナソニックの企業分析はこちらからどうぞ。
企業分析してみよう!パナソニックホールディングス㈱【6752】-Panasonic 総合電機大手-(事業内容/業績/給与/リスクなど)
事業内容は?
有価証券報告書から、【事業の内容】をみると、「土木事業」「建築事業」「開発事業等」「国内関係会社」「海外関係会社」の5つに分かれていることがわかります。土木、建築だけでなく、「開発」というデベロッパー・都市開発のような事業も持っています。
HPの沿革をみていると、有名な建築物ばかりがでてきます!
三井不動産の東京ミッドタウン日比谷も鹿島建設施工だったんですね。
ほかにも国技館や瀬戸大橋、青函トンネルなど、なくてはならないインフラも多数手掛けていますね。
・・・やっぱりいろいろありすぎて、全体像をつかめないですね。
数字をみて、規模感をつかみましょう。 セグメント 情報を見ていきます。
建築事業が売上・利益とも圧倒的に大きいですね~
次に海外関係会社で、土木は意外と小さいかも?
全体の約半分が建築で、土木は10%ほどですね。
オリンピック需要や東京の再開発などもあり、建築は活況だったようですね。
土木工事もニーズはあっても人手不足で手が回らないという事情もあるようです。
次は地域別の売上をみてみましょう。
海外だと北米がダントツですね。やっぱり成長市場ということでしょうか。
北米はいち早くコロナからの脱却があったということのようですね。
ただ人口、GDPの成長が背景にあることは間違いありません。ただし足元ではインフレが急激に進んでおり、現地の工事受注は足踏みが予想されますね。
それでも、中期経営計画では、投資投資の半分以上は海外開発事業ですし、グローバルな人材が重宝されそうですね。
研究開発活動が重要
土木・建築分野というと、ITテックのような急激な技術革新は起こりにくいものの、常に新しい工法が開発されており、人手不足や環境への配慮など、研究開発により差別化していくことが重要な課題の一つといえます。
確かに研究開発活動の記載についてもかなりのボリュームですね。
目を引くものがあったのでご紹介します。
JAXAとの共同研究で、月面での遠隔施工を想定した実験を行っています。
将来は国外のみならず、月面でも建築を手掛けることになるかもしれませんね!
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
意外と少ない・・ような気がしますがどうでしょう?
建築・土木の特徴の一つとして、下請け文化があります。
元請はスーパーゼネコンで、統括管理は行うものの、実際の施工業者は一次請け、二次請けといった下請け業者を使うのが通常です。
ビジネスモデルの特性上、工事の需要には波があるため、人員を自社で確保すると固定費が吸収できず、経営が困難になるためです。
それで少なく見えるんですね。平均勤続年数が長いのも意外でした。
給料はさすがの水準ですね。
事業のリスクは?
最後に、鹿島建設が考える事業のリスクについてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
ここでは3つの分類で計11個のリスクが記載されています。
その中でも重要と考えられるのは「建設業の担い手不足に関するリスク」でしょうか。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になりうるとしています。
労働環境の整備や、職業としての魅力向上、自動化、省人化、ロボット化を進めることでこれに対応しようとしています。
確かに需要があっても、作り手がいないと売上は増やせませんもんね。
若い世代でも建築の現場で働きたいと考える人も減っているというのは想像できます。
終わりに
海外で、建物をみると、日本のビルの美しさを再確認できます。
大きなデザインだけでなく、タイルのひとつをとってもディティールまでこだわりが日本の建築業の強みでしょう。また非常に狭い東京のような土地で、ビルドアンドスクラップをやってのける技術も、日本ならではと言えます。
近代化したビルは日本の特徴の一つですよね。
街全体がきれいで、そこに建つ洗練されたビルは、一度はみんながこんな場所で働きたいと憧れるのでないでしょうか。
地方の過疎化などは日本の課題の一つですが、建築が解決策の一つになる可能性はあります。
箱ものと批判されたりもしますが、やはり人が集まる場所を創る仕事は、とても魅力的だと思いますね。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。
日進月歩。