今回は、エアコン世界最大手メーカーであるダイキン工業株式会社について、有価証券報告書をざっくりと読み解いていきたいと思います。
時価総額は、2022年9月現在で6兆3千億円、売上も2022年3月期では3兆円に達しており、世界のダイキンといってよいでしょう。
では早速みていきましょう。
有価証券報告書はEDINETや、各社のHPから見ることができます。
ダイキンの有価証券報告書はこちらからどうぞ。
事業内容は?
有価証券報告書から、【事業の内容】をみると、「空調・冷凍機事業」「化学事業」「その他」の区分に分かれていることがわかります。
「空調・冷凍機事業」については想像通りかと思いますが、「化学」についてはイメージにないですね。
HPをみると、フッ素化学に日本で初めて取り組んだのがダイキンで、それが今の化学事業になっているんですね。
「その他事業」の中には、油機事業(産業機械向け油圧ポンプなど)や特機事業(防衛省向け砲弾・誘導弾用部品など)といった、エアコンメーカーのイメージからは想像できないものづくりもしているようですね。
数字をみて、規模感をつかみましょう。セグメント情報を見ていきます。
売上高の構成をみると約90%を空調・冷凍機事業が創出しています。
空調・冷凍機事業の巨大さはもちろんですが、化学事業も2千億を超える売上があり、また世界中でまんべんなく売上を作っていることが印象的です。
利益率もそれぞれ10%近くありますね。
高い付加価値を持つ製品を、世界中で売れているというのは強いですね。
セグメント資産は、それぞれの事業の総資産を表しています。これをみると、空調・冷凍機事業に3兆円のリソースを投入しているということがわかりますね。
また「のれん償却費」が記載されていますが、「のれん」については次のトピックで説明していきます。
のれんについて
のれんとは・・企業を買収した際に発生する。買収価格と、買収対象企業の時価の差額。連結貸借対照表上は資産として計上されるが、換金価値はない。通常の固定資産と同様に、減価償却費として毎年費用化していきます。
例えば、100億円の株主価値をもつ会社を120億円で買収したとき、差額の20億円は会計上「のれん」として資産に計上され、将来にわたって償却(費用化)していきます。
ダイキンでは、毎年買収を撤退を繰り返しており、空調・冷凍機事業では2千億円以上ののれん残高があります。買収価額と買収対象会社の時価との差額がのれんなので、買収価額はもっと大きいということです。
先ほどのセグメント情報のところでは、のれんの償却額の記載がありますね。
毎年300億円の減価償却負担があるんですね・・
それでも利益が出せているというのは、全体として買収した会社群も利益を創出しているということが言えそうです。
毎年買収と清算を繰り返しているので、ポートフォリオが明確なのと、撤退のためのルールがしっかりしているのでしょう。
年収、平均勤続年数は?
有価証券報告書には【従業員の状況】を記載する項目があります。
平均年齢や勤続年数、給与なども開示されています。
平均年齢や勤続年数、給与は親会社の情報のみが開示されています。
グループ会社は含まれていません。
世界中で8万人もの人を雇用しているんですね。
親会社については、平均勤続年数が高めなのに、平均年齢がやや若く感じます。
おそらく会社が大きくなるにつれ、若い方の構成比が高くなってきているのかもしれませんね。そのせいか、この規模の会社の割には平均年間給与も低く見えてしまっているのではという気がします。
なお、年収で有名なのはキーエンスです。
キーエンスってどんな会社?業績は?年収や勤続年数は?将来性やリスクは?
事業のリスクについて
最後に、ダイキン自身が考える事業のリスクについてみてみましょう。
有価証券報告書には【事業等のリスク】を記載する項目があります。
ダイキンでは、4つの分類で計12個のリスクが記載されています。
その中でもトレンドとしては「気候変動等環境に関連するリスク」でしょうか。
世界のエアコンでトップシェアを持つリーディングカンパニーですので、気候変動対策もないがしろにはできず、むしろ他社をリードする立場にあると思われます。
「空気で答えを出す会社」を標榜されていますので、いかに環境にやさしい製品を世に出していくかは避けて通れない道と言えそうです。
終わりに
最終製品で世界シェアトップをとれる日本メーカーは、どんどん少なくなってきています。
海外メーカーとの激しい競争の中で、買収をてこにシェアをここまで引き上げてきたダイキンのような会社は、日本では多くなさそうです。
買収後に、いかにうまく統合し、シナジー効果を出していくかは非常に難しい問題です。
また買収時には多額ののれんも計上されるため、P/L上で利益を出していくのは簡単ではありません。買収先が海外企業であればさらに難易度は増すといえるでしょう。
グローバル人材が多く育っているのだろうと思いますね。成長の機会も多く得られるのではないでしょうか。
当記事が、多くの会社を知る一助になれば幸いです。
ではまた次回お会いしましょう。
日進月歩。