Y子:所長、今日はどこの会社ですか?
所長M:今日はニトリホールディングス(東証プライム・9843)だよ。CMの「お、ねだん以上。」でおなじみの会社だね。
Y子:家具を買うならまずニトリ、っていう人は多いですよね!
所長M:2026年3月期の売上収益は9,122億円、営業利益は1,255億円。家具・インテリアでは国内最大手だ。今回の決算は「売上は減ったのに利益は増えた」のがポイントだから、そこを中心に見ていこう。
ニトリってどんな会社?
Y子:ニトリは家具屋さん、でいいんですか?
所長M:自分たちでは「製造物流IT小売業」と言っているんだ。商品の企画から製造、物流、販売までを自社グループでやる、いわゆるSPA(製造小売業)だね。間に入る業者の取り分がない分、安く売っても利益が残る仕組みなんだ。
Y子:事業はどう分かれているんですか?
所長M:報告セグメントは「ニトリ事業」と「島忠事業」の2つ。島忠は2021年にグループに入ったホームセンターだよ。
| セグメント | 売上収益 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| ニトリ事業 | 8,161億円 | 1,183億円 | 14.5% |
| 島忠事業 | 1,102億円 | 72億円 | 6.5% |
所長M:売上の約9割がニトリ事業だね。海外にも出ていて、台湾、中国大陸、韓国、東南アジアなどに今期30店舗を出し、海外の店舗は209店舗になったよ。
Y子:本社は札幌なんですね。
所長M:登記上の本店は札幌市だけど、実際の業務は東京都北区でやっていると有報の表紙に書いてある。こういう細かいところが読めるのも有報の面白さだよ。
業績は?
Y子:「売上は減ったのに利益は増えた」って、どういうことですか?
所長M:数字で見てみよう。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 9,288億円 | 9,122億円 | ▲1.8% |
| 営業利益 | 1,176億円 | 1,255億円 | +6.7% |
| 当期利益(親会社帰属) | 825億円 | 892億円 | +8.1% |
| 営業利益率 | 12.7% | 13.8% | +1.1pt |
所長M:減収の主な原因は、国内の既存店の苦戦だ。既存店売上高は前期比95.8%、客数は92.8%まで落ちた。会社は「デザイン・機能・価格で競争力のある新商品の開発が十分に進まなかった」と自己分析していて、商品部の組織を変えて立て直しに入っているよ。
Y子:それでも利益は増えたんですね。
所長M:理由は大きく3つある。
- 荒利益率の改善:51.0%から53.2%に上がった。
- 物流コストの削減:商品パッケージを小さくして輸送コストを下げたほか、新しい物流センター(DC)の稼働や新しい倉庫設備で保管効率を上げた。
- 島忠の黒字転換:前期の▲12億円の赤字から、72億円の黒字になった。PB(プライベートブランド)商品の比率を上げたことと、テレビCMの削減などの経費見直しが効いた。
Y子:5年分で見るとどうですか?
所長M:「主要な経営指標等の推移」を見てみよう。ここは要注意で、ニトリは途中で決算期と会計基準を変えているんだ。
| 決算期 | 売上 | 当期利益 | 基準 |
|---|---|---|---|
| 2022年2月期 | 8,116億円 | 967億円 | 日本基準 |
| 2023年3月期 | 9,481億円 | 951億円 | 日本基準(13か月11日の変則決算) |
| 2024年3月期 | 8,967億円 | 902億円 | IFRS |
| 2025年3月期 | 9,288億円 | 825億円 | IFRS |
| 2026年3月期 | 9,122億円 | 892億円 | IFRS |
所長M:2023年3月期は決算期を2月20日から3月31日に変えたので、13か月と11日分の数字なんだ。前後の年と単純に比べちゃダメだよ。それと、第53期(2025年3月期)からIFRSで連結財務諸表を作っている。
Y子:落とし穴ですね…。財務の安全性はどうですか?
所長M:親会社所有者帰属持分比率(日本基準でいう自己資本比率にあたる指標)は62.9%で、とても健全だ。営業キャッシュ・フローは1,489億円の収入、投資キャッシュ・フローは551億円の支出だから、本業で稼いだお金で投資をまかなえている。ROEは9.4%だね。
Y子:配当はどうですか?
所長M:2025年10月1日に1株を5株に分割した。2026年3月期の年間配当は分割後ベースで30.8円(分割前ベースだと154円)。22期連続の増配の予定だよ。
年収、勤続年数は?
Y子:一番気になるところです!
所長M:「従業員の状況」によると、こうなっている。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 約745万円 |
| 平均年齢 | 39.6歳 |
| 平均勤続年数 | 12.2年 |
| 従業員数(提出会社) | 884名 |
| 従業員数(連結) | 19,432名(ほかに臨時従業員 平均22,304名) |
Y子:745万円! 高いですね。
所長M:ここが有報を読むときの一番の注意点だ。平均年収は「提出会社」の数字なんだよ。ニトリホールディングスは持株会社だから、対象は本社の884名だけ。お店で働く人の多くは事業会社の株式会社ニトリなどに所属しているから、この数字には入っていないんだ。
Y子:グループ全体の平均年収とは違うんですね。
所長M:そう。推移を見ると、835万円(2022年2月期)→787万円→807万円→781万円→745万円で、ここ数年は下がっている。ただ、持株会社は人数が少ないから、組織の変更や人の入れ替わりで平均が動きやすいんだ。
💡 コラム:2026年の有報から「従業員の状況」が変わりました
2026年2月20日の開示府令の改正で、「従業員の状況」は「第1 企業の概況」から「第4 提出会社の状況」に移りました。あわせて、①連結ベースの企業戦略と結びついた人材戦略、②従業員給与等の決定方針、③提出会社の平均給与の対前年比増減率、の記載が新しく求められています。2026年3月31日以後に終わる事業年度の有報から適用されるので、ニトリの今回の有報が最初の対象です。
ちなみにニトリの平均年収を前期と比べると、約781万円から約745万円で、約4.6%の減少になります。
働きやすさは?
Y子:女性の活躍や育休はどうですか?
所長M:提出会社の数字だけど、こうなっている。
| 指標 | 2026年3月期 | 前期から |
|---|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.7% | +2.2pt |
| 男性の育児休業取得率 | 82.4% | +5.2pt |
| 男女の賃金の差異(男性=100) | 64.5 | +2.4pt |
所長M:小売業では、女性管理職比率も男性の育休取得率も高いほうだね。役員も9名のうち2名が女性で、女性比率は22.2%だ。
Y子:賃金の差異は64.5…まだ差がありますね。
所長M:男女の賃金の差異は、管理職に占める男女の割合や働き方の違いで決まってくるものなんだ。女性管理職が増えれば、だんだん縮まっていくはずの数字だよ。社員教育にも力を入れていて、正社員1人あたりの教育時間は年間167.8時間と開示されている。転居を伴う異動を抑えられる「マイエリア制度」もあるんだ。
将来性・リスクは?
Y子:これからはどうなりそうですか?
所長M:2027年3月期の予想は、売上収益9,570億円(前期比104.9%)、営業利益1,303億円(同103.8%)。国内外であわせて143店舗の純増を計画している。
Y子:気をつけたい点は?
所長M:数字から読めるのは、この3つかな。
- 新商品の開発力:既存店の客数が92.8%まで落ちたのは、新商品の不足が原因と会社自身が分析している。1年以内に発売した新商品の比率(SKUベース)を、2026年3月期末の23%から2026年度の第4四半期には38%まで上げる計画だから、ここが計画どおり進むかが一番の注目点だ。
- 為替の影響:海外で作って輸入する商品が多いから、円安は原価を押し上げる。2027年3月期は社内レートを1ドル155円で計画しているよ。
- 海外事業:台湾はオープンから5年で黒字になり、中国大陸やASEANでも採算が良くなってきた。次の成長の柱になれるかどうかだね。
まとめ(所長Mのひとこと)
所長M:ニトリの2026年3月期は、売上が伸び悩む中でも物流とPBで利益を出す「稼ぐ力」が見えた決算だった。一方で、客数を取り戻せるかどうかは新商品の開発にかかっている。平均年収745万円は持株会社の884名だけの数字だから、ここは読み違えないようにね。
Y子:「平均年収は提出会社の数字」、覚えておきます!
※本記事は株式会社ニトリホールディングスの2026年3月期有価証券報告書(2026年6月24日提出)および決算説明資料をもとに作成しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。


コメント